結局どっちがいいの?個人事業主が考えるべき法人化のポイント

確定申告時期もいよいよ終盤となりました。こんな時期に、個人事業主の方はチラリと考えることがあるのではないでしょうか。

「自分の事業は、法人化したら、得なの?損なの??」

今回は個人事業主の方が、法人化するべきか否かについてお伝えしていきます。

こういう情報は、『税理士さんは税金の観点で』、『社労士さんは社会保険料の観点で』と、色々と情報発信してくれていますが、どうしても専門分野の範囲に閉じてしまっているので視野が狭くなりがちです。

そこで今回は法人を設立して10年たつ経営者(僕です)から、こういう観点で考えてみてほしいというポイントについて、概要だけさらっとお伝えしようと思います。

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一つ一つを掘り下げるととても長くなるので、とりあえずはかいつまんで簡単にまとめてみました。細かい解説やケーススタディなどは、別の機会に。

1.税金の観点で見る法人化のポイント

まずは法人税と所得税と給与控除の関係。

法人税は売上に連動しません。定率です(基本一律40%、中小企業には低減税が適用されます※2015年3月現在)。

所得税(個人分)は累進課税なので所得が増えれば税率も上がります。

法人から役員報酬として給与を受け取る場合は給与所得控除(=減税)が使えます。

これら税金の観点で考えると

売上が1,000万円/年 以上あるなら法人化した方がお得です。

(※個人の感想です)

他にも退職金は所得税よりも税率が低いです。

これも法人化しておくメリットですね。

いずれ次代に引き継ごうと思うのであれば、法人化しておく方が得策かもしれません。

 

2.社会保険の観点で見る法人化のポイント

法人は社長一人の会社であっても社会保険の加入が義務です。

個人事業主は従業員が5名未満であれば任意加入です。

そして社会保険に入ると、事業主は従業員の支払う社会保険の50%強を負担しなければなりません。

もし今個人事業主として5人未満の雇用をしているとして、従業員の方が個人で社会保険料を負担してくれているのであれば、正直なところ、そのままの方がお得です。

従業員がいない(=事業主1名の法人となる)場合は、社会保険を支払う方がお得です。

ちなみに、社会保険の事業主負担の50%強の部分は経費になるので、その分税金は安くなります。

 

3.銀行の観点で見る法人化のポイント

信用力について、やはり法人化した方が良いのではないか?と考えていますか?

そんな考えはやめましょう。

銀行が一番重視するのは『あなたと言う人物が信用に足るか否か』です。

つまり、法人化しようと、個人事業主のままであろうと、最終的に審査されるのは”事業主への信用”ということになるので、見られる部分はあまり変わらないということ。

信用してもらえるのであれば、1000万円程度なら年利1%以下で借りられます。

信用力がどのくらいなのかは、申し込みから審査完了までの期間でわかります。

僕の経験では、審査は1週間もあれば十分です。

銀行への信頼において、法人化するかどうかというのは、あまり大きな問題ではありません。

 

4.お客さんの観点で見る法人化のポイント

あなたの事業は対個人(BtoC)の事業ですか?それなら法人化はあまりメリットがありません。

例えば、近所の八百屋さんが、髪を切りに行く床屋さんが、法人かそうでないかなんて、お店に来るお客さんにはあまり関係が無いですよね。そういうレベルの問題です。

あなたの事業は対企業(BtoB)の事業ですか?でしたら、すぐにでも法人化するべきです。

法人ではないと言う理由で取引の与信審査が通らない、なんてこともザラにあります。つまり、それは法人でない、というだけで、取引をしてもらえないということです。

今の顧客に対しては与信審査などの心配はいらないかもしれませんが、これから新規顧客を開拓したいと思うのであれば、事前に備えておかなければなりません。

運がいい人と悪い人の分かれ道というのは、実はこのあたりの考え方にあります。

いい波が来た時に準備を始めても間に合わないこともあります。この先のチャンスを見越して準備を進めておくというのも、何かをつかむ為には大切なことなのです。

5.従業員の観点で見る法人化のポイント

従業員からすれば、個人事業主でいることのメリットは何一つありません。

「小さい組織の方が小回りが利いて良いと思うけど?」

それは大いなる勘違いです。

小回りが利くかどうかはあなた次第です。

社会保険に加入できるかどうか、住民税の特別徴収はあるのか、友達や親戚への体面などなど、何をとっても法人の方がメリットが大きいです。

この先ずっと一人でやっていく、と言うわけでなければ法人の方が良いでしょう。

 

金重からのアドバイス

さて、世の中でよく言われている観点を5つお伝えしてきたものの、実はこれらはあまり考える必要はありません。

ここまでちゃんと読んでいただいた方にはごめんなさい m(__)m

 

世の中には法人化させることで利益を生んでいる人たちがいます。

そのような情報に流されてはいけません。

一番考えなければならないのは、あなたの描く未来です。

 

このままずっと、現役を退くまで個人事業主でやっていくのですか?

従業員は雇いますか?

事業として拡大させたいですか?

「その通りだ!」と思うなら自ずと答えが出てくるのではないでしょうか。

 

「いや~、確かにそれはそうなんだけど・・・」という感覚の人もいると思います。

この感覚の人こそ、この記事を読んでもらいたい人なんです。

僕は必ずしもすべての事業主(個人に限らず)は経営をやりたいわけではないのではないか?と常々感じています。

やってみればわかりますが、経営って結構大変なんですよ。

『俺は社長になって金持ちになるんだ!』

と言う方。ご立派です。ぜひ頑張ってください。

でも現実はイメージしている甘美な世界とはちょっと違うかもしれません。

なので、夢を見せるがごとく、「社長になりなよ」なんて、そんな無責任なことは気楽に言えません。

特に職人気質の方で経営もやっている方がいらっしゃいますが、僕からするとちょっと勿体無いと思うこともあります。

僕は

『職人=存在そのものが財産』

だと思っています。

分野にもよりますが、無形文化財だったり人間国宝だったりする人たちだっているわけです。

折角そういう、守るべきものがあるのに、やれ役所の手続きだ、やれ税金だなんてことに貴重なリソース(時間や意識)を割くなんて、もったいないとしか言いようがありません(現実的な話、法人化するにあたって、書類への対応は格段に増えていきます。決算なども複雑になると覚悟をしておいてください)。

何かを生み出すという貴重な技術をお持ちの方、もっとご自身の価値に気付いてもらいたいとも思います。

そういう職人気質の方は、将来の方向性を共有できる信頼できる経営パートナーを見つけて、面倒なことは任せられるような環境を作るのが一番オススメです。社長ないしは取締役などの経営者を雇えばいいのです(まぁ…それが一番大変という説もありますが)。

自身というブランドや、技術、貴方が時間をかけて磨かなければいけない部分はきっと他にあると思います。

 

僕のように、優れた技術もなく、職人にもなれない半端物は、せっせと勉強してプロの経営者(専門経営者と言います)を目指しましょう。

そしてパチパチとそろばんをはじいて、せっせと書類を書いて、ぺったんぺったん判子を押してましょう。

さて、あなたの未来はどちら側?

 

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しゃちょー

しゃちょー

有限会社こだまシステム社長。18歳の時からIT業界で働く。趣味はモータースポーツ。マイブームはダイエット。

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